謝罪からの……
第18話
{……藤井です。今、お時間大丈夫ですか?}
電話の相手である藤井の問いかけに、來未は思わず樹の方を見た。
電話の相手である藤井君に、店長である樹と二人っきりのこの状況をみられても別に構わないのだが、何故か、彼に申し訳ない気持ちになってしまう。
理由は、多分……
『よかった。七橋、お前が無事で、お前にもしものことがあったら』
(うんん。あれは違う! あれは、ただ……)
來未は、樹の方を見ながら彼に抱きしめられたさっきほどの出来事を思い出す。
しかし、すぐさま……首を横に振る。
(いやいやぁ店長は、私を落ち着かせる為にしてくれただけ! そう、そうに決まってる!)
來未は自分で自分を納得させながら、電話越しの藤井に向かって、
「……どうしたの? 藤井君から私に電話してくるなんて?」
さっきのこと(自分への悪口)があるので、本当は出たくないが、出ないと出ないとあとでまた悪口を言われても困るので、しょうがなく電話に出る。
{……ああぁぁの?}
七橋の「どうしたの?」の言葉に、電話越しの藤井は、「あぁぁぁの?」
と言うばかりで、他の言葉は全く口にしない。
なので、電話を受けた來未も、やっぱり出るんじゃあなかったと後悔し、こっちから電話を切ろうとしたら、
「おい! 藤井! 言いたい事があるなら黙ってないでさっさと言え!」
來未の隣で藤井との通話を訊いていた樹が、突然來未のスマホを奪い取り、自分の代わりに藤井に怒りだした。
「ててて店長! どうして、店長が七橋先輩の携帯に?」
いきなり通話越しに聴こえてきた樹に声に、藤井どころか彼の存在を藤井に隠そうとしていた來未までが驚きの声を上げる。
「そんなのお前には関係ないだろう! それより、七橋に言いたい事があるから電話してきたんだろう! だったら、黙ってないでさっと言え!」
{あぁぁぁはい!}
藤井にかつを一発入れると來未から奪い取ったスマホを返すと、樹はそのまま、駅とは反対の方に消えていった。
「……もしもし」
來未は、改めて藤井の電話に出る。
{……七橋先輩。僕は、貴女は好きです。だから、先輩に好意を抱いても、悪意は抱きません。勿論、悪口も。僕は……ずっと、貴女に恋をしていました}
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