第15話
華水駅前公園 20時半
「……お前はバカか? 今日、それも精神的に不安定な状態の七橋なら、例え、それが自分じゃあなくて兼城に向けた悪口じゃあなかったとしても、今日のあいつなら信じるぞ!」
藤井からなんで誰もない夜の公園で一人叫んでいたのか理由、そして、その原因になった七橋來未との出来事も全て教えて貰った。
そのうえで、藤井に問いかけた。
「……はい。解ってます。僕が全部悪いです。僕は、兼城先輩の悪口さえ言わなければ、こんなことにはならなかったんです」
樹の言葉に、藤井は、下を向いたまま「自分が悪い」「自分が兼城先輩の悪口さえ言わなければ」この言葉を3分も以上もずっと繰り返している。
だけど、ここまでくると……藤井にその言葉を言わせた樹も、
「藤井! もうお前の気持ちは解ったから。それ以上は、近所迷惑になるから止めろ! それに、他人への悪口は絶対ダメだけど、愚痴だったら俺が聞いてやるし。それに七橋だって……」
俺の知っている七橋來未は、どんなに自分が悪くなっても、「ごめんねぇ?」と自分の方から相手に謝ってしまう。
七橋は全く悪くないのに……「ごめんねぇ? 私のせいだよね?」といつも自分がいかにも悪かったように相手に頭を下げる。
そのせいで、背負わなくてもいい痛みまで余計に背負って、余計に心に傷を負う。
けど、七橋は、絶対それを他人には見せない。
むしろ、一人で全部抱え込んで、独りで何もかも解決しようとする。
そう……寂しさも苦しさもあいつは絶対人には見せない。
あいつは……
「……店長?」
「あぁ! だから、お前が誠意をもって七橋に謝罪すれば、あいつは笑って許してくれると思うぞ!」
「はい! 俺、七橋先輩に電話します」
「おう! 頑張れ!」
「はい! 店長! ありがとうございました」
樹にお礼を告げると藤井は、リュックサックを足元に置いていたリュックサックを背負って公園の外に駆け出していった。
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