第13話

写真館で働き出して5年目の12月2日の寒い朝いつも通り、開店の準備をしていた美緒の元に一本の依頼の電話が掛かってきた。

 依頼内容は、12月24に行われる結婚式の前撮り写真を撮影して欲しい。

 そして、その依頼人がまさかの茉莉川杏奈とその旦那の草津千里だった。

 二人の事は、渚君から写真付きで話を教えて貰った事があった。

 そして、その後二人に何が起こったのかも。

 だから、その二人が夫婦として、自分の前の突然現れた時は、驚きと同時に恐怖を覚えた。

 二人は、渚君の事を知っている。数少ない人物。

 それどころか、草津千里に関しては、もしかしたら…私の事まで知っているかも知らない。

 折角、自分達の事を知らない街に逃げてきたのに…

 折角、新しい未来を誰も自分達の事を知らないこの街で過ごそうと思ったのに…

 世間はやっぱり、私達を逃がしてはくれない。

 ☆

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