第12話
12月18日 10時。
侑李からの電話を終え、今日の撮影の準備をしていると会議室に、胸元と両腕一部がレースになっている黒いワンピースにブラウンのジャケットを羽織った杏奈が会議室に入ってきた。
でも、今日は、来週行われる結婚式の前撮り撮影のはずなのに杏奈一人しか居ない。
「…泉石さん。今日はよろしくお願いします」
「おはようございます。あれ? 杏奈さん? お一人ですか?」
「そのことなんですけど…彼、一昨日からインフルエンザに罹ってかかってしまって」
茉莉川杏奈は、撮影の準備をしていた美緒に向かって申し訳なさそうに頭を下げる。
「インフルエンザ!? それは、大変ですね? だったら今日の前撮りは…」
旦那がインフルエンザなら、今日の撮影はできないと杏奈に伝えようとした瞬間…
「あの? 私だけでも撮影して貰う事は可能ですか?」
「えっ!」
まさかの提案に驚く美緒。
「勿論、今日の分のお金は二人分お支払いします。だから…」
「…撮影する事はもちろん可能ですが…旦那さんとご一緒ではなくてよろしいのですか?」
「はい! 旦那には私から話します。だから、よろしくお願いします」
「解りました。それでは、ご準備ができたらお呼びください」
メイク担当のスタッフに声を掛けようとした瞬間…腕を掴まれる。
「このままでよろしくお願いします。ありのままの自分を貴女に撮って欲しいです」
撮影用に公園内に併設されている屋内施設の会議室を2部屋、資材置き用と、杏奈らの更衣室用に1日借りた。
だが、結局更衣室用に借りた会議室は結局無駄になってしまった。
「わわわ解りました。では、早速撮影を開始しましょうか? どこで撮影すか?」
「ああの?」
「はい! 撮影する場所はどこでもいいんですか?」
「はい! 公園内だったらどこでも構いせん。でも、立ち入り禁止場所や駐車場など車が通る場所以外でお願いします」
「解りました。ちょっと、どこがいいか見てきても構いませんか?」
歩き出そうとしていた杏奈に、美緒は自分の携帯を見せながら…話し掛ける。
「杏奈さん。場所が決まったらこれで連絡してください」
杏奈にそう告げると、美緒は彼女に予備で持ってきていたインカムを彼女に渡した。
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