第83話

『私の……』

 あの人に、あんな辛そうな顔させたくなったのに

 あの人に……

『堂城は悪者(ばか)にしないで下さい』

 私は、ただ、あの人に璃菜が、どんな思いで堂城先輩のことを想い続けていたか伝えたかっただけなのに

 ただ……

『私も本当は、堂城先輩のことすきでした』って伝えたかっただけなのに

 あんなにも目の前で

 愛おしそうに、彼の事を語られたら、本当の気持ちなんか言える訳ないじゃあん。

 あんな……宝物を見つめる子供みたいにキラキラした瞳で見つめられたら、もう何も言えないじゃん

 それどころか奪える訳ないんじゃあん

 私達……いやぁ? 私が、好きなった堂城誠也は、元死神で、本当は寂しがり屋な癖にその事を一切表に出さない天邪鬼で、でも恋愛に関しては一途の貫く優しい先輩。そんな先輩が、一途の愛した女性を蹴落としてまで、先輩と結婚しようと私は思うわないし、勿論璃菜も。それに……」

 胡桃は、スマホをカバンから取り出す。

 すると、同期で友人の市宮百花から「久しぶりに璃菜も誘って、3人で食事でも行かない?」とオレンジにメッセージがきていた。

 胡桃は、そのメッセージに「いいよ」と返事と猫のスタンプで返事を返すと、璃菜に電話を掛け始めた。

「もしもし、璃菜? 百花から3人で久しぶりに食事に行かないってメール来たんだけど……」

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