第80話

自分の言葉を無視に、花の注文をしてくるだけではなく、昴くんのこと、なんなら、私達が離婚したことまで知っている。

 私達が、離婚したのは知っているのは、互いの両親と私の友人、そしてホワイトでいまも働いている職場のメンバーだけ。

 あと、本当なら4年前、私達の結婚式に、祝電を送ってくれた、昴くんの親友で、今は海外にいる渚くんにも教えた方がいい。

 でも、渚くんは、わたしと昴くんの結婚を一番喜んでいてくれた。

 そんな渚君に、「離婚」それも、渚くんだけに、罪を背負わせることはできない。だから自分と離婚して欲しいと言われた昴くんの想いを伝えることはできない。

 本当は、離婚なんてしたくなかった。

 本当は、私もあなたと一緒にその罪を背負っていきたかった。

 灯は思わず、男性の顔を見る。

 しかし、すぐさま、落胆の表情に変わる。

「もしかして、僕のこと、鳴海坂昴だと思いました?」

「貴方は、一体?」

「私は……西條侑李と言います」

「西條?」

 だれ? 首を傾げる灯。

「こんな形ではお話しするのは初めてですけど、直接会うのは二回目ですよ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る