第61話

6月11日 晴海編集部 9時30分

「おはようございます」

「あぁ! 黒木先輩! おはようございます」

「おはよう渋谷ちゃん! 相変わらずいつもあぁ~ぁぁ」

 昨日余り、色んなことがあり過ぎて余り眠れなくてなかった。

「黒木先輩? なんだか眠そうですね? あぁ! もしかして!」

 もしかして、私のせいですか? と不安そうに渋谷が自分のことを見詰めてくる。

「あぁ! 違う違う! 堂城副編集長とのやつをまとめたら、予想外に時間が掛かちゃって。気づいたら深夜になってて」 

 本当は、打ち合わせすらできていない。

 けど、それを渋谷に言う必要はない。

 ってか言えない。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫! 3時間は寝てたから! それに、締め切りが近くなったら、2徹とか普通だから」

「……」

「渋谷ちゃん?」

 急に黙り込んでしまった渋谷の名前を呼ぶ。

「あぁ! すみません。あの? 黒木先輩?」

「んん?」

「あの? 黒木先輩は……」

「おはようございます」

「!」

 渋谷が、黒木になにかを質問しようとした瞬間、黒いリュックサック背負った渋谷康太が晴海編集部に入ってきた。

「あぁ! 鮫島先輩! おはようございます! 鮫島先輩! 今日は、いつもより早いですね?」

 黒木に話しかけようとしていた渋谷は、一旦話しを保留し、鮫島に挨拶をする。

 鮫島もそんな渋谷の挨拶に気づき、二人の方にやってくる。

「黒木? ちょっと? 今? いいか?」

「えっ? 今?」

 黒木が、渋谷の事を見る。

 渋谷の話しが中途半端になっていたからだ。

「あぁ! 黒木先輩! 私なら大丈夫ですよ?」

「本当に?」

「あぁはい! それに? 私のはちょっとした世間話みたいなものなので」

「そう? じゃあ? ちょっと行ってくるねぇ?」

「あぁはい!」

 二人のことを見送る渋谷。

 しかし、そんな渋谷の手には、「黒木胡桃様」と書かれた結婚式の招待状が握られていた。

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