大切だからこそ

第57話

拝啓 鳴海坂昴様

 さわやかな初夏を迎え、柔らかな日差しが若葉に降り注ぐ頃となりました

 そっちはどうですか?

 こっちは、梅雨入りしたのもあって、毎日天気予報とにらめっこです。

 あと、色んなものが、湿気でジメジメです。

 さて、今回、手紙を書いたのは、昴くんにご報告と伝えたいことがあったからです。

 先月の昴君からの手紙にも書かれていた、渚に渡して欲しいと頼まれていた本ですが、渚との定期面会の時に、着替えと一緒に昴くんの名前は伏せて差し入れさせて頂きました。

 それにしても、いつの間に、昴くん作家デビューしたんですか?

 それも、本名ではなく、若瀬怜音って! ペンネーム格好良すぎませんか?

 まぁ? それは置いといて?

 昴くん。

 昴くんが作家になったのって、渚に自分のいまの気持ちを伝えるためだよね?

 昴くん。

 渚? 後悔したよ?

 自分のせいで、昴くんが、大好きな樋宮灯さんと離婚したんじゃあないかって?

 3年前。

 自分が誰にも、勿論美緒さんにも、自首する事を告げずに独りで罪を背負ったばかりで、昴くんが逆に罪の重さに苦しんでいるんじゃあないかって?

 渚は、決して、君を拒絶してわけでも、君と距離を置こうとしている訳ではないよ

 ただ、これ以上、「泉石渚」という負の十字架を昴くん! 渚は、君に背負って欲しくないんだよ! 

 渚にとって、君は、相棒(親友)だから

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