第50話

「……」

 数秒間の無音。

「あぁあぁの?」

 その無音の沈黙を破って、鮫島が言葉を口にしようと瞬間、その声に重ねるように堂城が言葉を重ねる。

「……鮫島。確かに、百花は、俺にとって黒蝶時代からの大事な後輩だ。勿論、黒木や小泉、渋谷。そして、鮫島、お前だって、俺にとって大事な後輩だ。でも、俺が、いま一番護りたい? 大切にしたいと想う女性は、妻だけだ! でもそれ以上に、俺は、百花のことは、大事な戦友だと思ってる!」

「……戦友?」

「あぁ。あいつ……百花とは、俺が、黒蝶にいた時から、数々の戦場を渡りあった数少ない同志であり、同じ釜の飯を食った仲間だから! だから……」

「はぁぁはぁぁ」

 急に笑い出す鮫島。

「なんだよ! 急に笑い出して気持ち悪い奴だなぁ?」

「堂城副編集長? いやぁ? 堂城先輩! 俺? 黒木胡桃が好きです! だから、あいつに、いまから好きって告白してきます!」

「……そっか? まぁ? 後悔だけはするなよ! じゃあ? お疲れさん!」

「お疲れ様でした! あのあぁ?」

「んん?」

 出て行こうとした堂城を鮫島が呼び止まる。

「堂城副編集長は、今、幸せですか?」

「……幸せだよ! だから鮫島! お前は、絶対間違えるなよ? 幸せになる為の選択を?」

 そう、俺はいま、幸せだ!

 けど、この幸せがあるのは……

 あいつ、泉石渚が居てくれたから。

 泉石! お前いま! どこいるんだよ! 

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