第49話
「そそそれは……」
一瞬、百花の方を見る。
鮫島の堂城の視線を追う様に、市宮の方を見る。
すると、その視線に気づいた百花が鮫島から視線を逸らす。
「副編集長! 答えて下さい! 本当に市宮さんとは、なにもないんですか?! 本当は副編集長……」
「いい加減して!」
二人の間に、百花が割って入る。
しかし、二人には、見えていないが百花の瞳には、一粒の涙が。
「市宮さん!」
突然、自分達の間に割り込んできた百花に、鮫島は驚き、思わず一歩後ろに下がる。
「……鮫島君。堂城先輩にはねぇ! 樹利亜さんっていう愛すべき最愛の女性(奥さん)がいるの! そんなの先輩が、私と不倫関係? ふざけないで! 確かに? 堂城先輩は、私のことを苗字じゃあなくて、名前で呼んでくれる。けどそれは、私がそう呼んで欲しいって、堂城先輩に無理やり頼んだけで、そこにそれ以上に感情はないし、例えあったとしても、それは恋愛感情ではない。それに、私……」
「ちょっと待って! 百花!」
堂城が制止するのは、振り払って、堂城にだけ解るアイコンタクトを目で送り、鮫島君に向かって、衝撃のカミングアウトをする。
「鮫島君だっけ? 私さぁ? 胡桃たち? それどころか、一緒に働いている黒蝶の皆にもまだ報告してないけど、1年前に元刑事の男性と結婚してるから! だから、堂城先輩と不倫どころか、そもそも先輩のこと異性として見てないので!」
言いたい事を言い終えた百花は、鮫島に背を向けるとそのまま、扉の方まで歩いていきそのまま晴海編集部から出て行ってしまった。
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