第43話
「じゃあ、さっ……」
「堂城副編集長! 黒木と2人きりで、残業だからって彼女の事を襲っちゃだめですからね!」
「鮫島!」
「鮫島君!」
皆と一緒に、今、編集部を出て行ったばかりの鮫島宏太(30)が、扉の前に立っていた。
「鮫島! お前、みんなと一緒にいま帰ったんじゃあ?」
「そのつもりだったんですけど、黒木の事が心配で?」
「私!」
黒木にとって、鮫島は、同い年の同僚で、時々コンビを組んで取材に行くぐらいの関係。
なので、鮫島の今回の行動の真意が、黒木にはわからない
「あのなぁ? 俺が、黒木の事、襲う訳ないだろう? 俺、一応、既婚者だぞ! こう見えて!」
堂城は、鮫島に自身の左手の薬指に嵌めているシルバーの結婚指輪を見せる。
「……確かに。綺麗な結婚指輪ですね? けど、僕は、その結婚指輪だけで、副編集長が、本当に黒木の事……いやぁ? それより、黒蝶の市宮百花さんとは、いつから男女の関係なんですか?」
「!」
その場に崩れ落ちる黒木。
そんな胡桃の事を気にしつつ、鮫島は、さらに畳みかける。
「僕の周りはみんな噂していますよ? 晴海編集部の堂城副編集長は、直属の後輩から(滝川春さん)から、元後輩(市宮百花)に乗り換えたらしいって? 流石、元死神さんはやることが違いますねぇ?」
「……」
鮫島の言葉に反論どころか、返事すら返さない堂城。
一方の黒木は、そんな堂城の態度に、さらにショックを受ける。
そして、鮫島もまた、なにも反論しない、堂城に怒りすら覚える。
「反論しないってことは認めるってことですか? 堂城副編集長! 貴方は、最低な人間です! そんなに……」
「……だったら、お前が、黒木と一緒にやればいい。その方が、黒木だって、気を遣わずに済むだろう?」
堂城は、悪魔の笑みを浮かべながら、鮫島の左肩を掴む。
そして、スマホを取り出すと、どこに電話を掛け始める。
すると、2分後、3人がいる晴海編集部に、一人の女性が誰かが部屋に入ってきた。
「……胡桃」
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