第42話

「堂城副編集長は、どう思い……堂城副編集長?」

「あぁっあ! どうした黒木?」

 百花との出来事(百花からの突然告白&抱擁)の考えていた堂城は、黒木から急に名前を呼ばれ、思わず声が裏返る。

「あぁえっと……副編集長は、浜中商事からの提案どう思われますか?」

「いいんじゃあないのか? 浜中社長からの直接のオファーなんだろう?」

「あぁはい!」

「だったら、俺に反対する権利はない。それに、俺たちは一度、形はどうあれ浜中商事からの信頼を失っている。そうだろう?」

 堂城は、黒木、いやぁ? 自分に向かって問いかける。

「はい!」

「じゃあ? 黒木? お前のやることは一つしかないだろう?」

 黒木は、堂城からの問いかけに、全員の顔を見渡しながら、棗編集長に向かって、

「棗編集長! 私、みんなが、食べて笑顔になれる美味しいどら焼きを浜中商事さんと協力して作ります! だから、お願いします。もう一度、私にチャンスを下さい!」

 頭を下げる。

「……解った。けど、独りで商品開発は大変でしょ? だから、誰か一人? お手伝いがいた方がいいじゃない?」

「そうですね? 一人よりかは二人の方が……」

 棗の提案に、黒木は、元々一緒に取材に行っていた渋谷の方(自分の右隣)を見る。

 渋谷も、そんな黒木の視線に気がつき、相棒として、立候補しようと椅子から立ち上がろとしたら、

「堂城副編集長! 黒木さんをフォローしてあげて?」

「解りました」

「ちょっと待って下さい!」

 棗の堂城指名に、黒木が待ったを掛ける。

「どうしたの黒木さん? 堂城副編集長が相棒だと? やりづらい?」

「いいえ。むしろ、ありがたいですけど……堂城副編集長は、自分の仕事は大丈夫なんですか?」

「別に? お前ごときに心配される筋合いはない。多少の仕事ぐらい問題ない」

「そそそうですか?」

 ただ、棗が自分の相棒に堂城副編集長を指名した瞬間、自分の左隣に座っている璃菜が小さく「えっ?」と言う声が聴こえてきた。

 勿論、黒木しか聞こえない程の小さな声。

「だったら決まりねぇ? 2人とも美味しいどら焼きといい記事、期待してるわよ!」

「解りました」

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