第22話

「春ちゃん。あの子に…渚ちゃんに気なんて使わなくていいのよ。あの子は、私達に興味すらないんだから」

「どういう事ですか? 先輩って渚さんの仕事に協力してるんですよね?」

 滝川春には、先輩である堂城誠也が言ったいる言葉の意味が全く理解できない。

 だって先輩は、渚さんの探偵の仕事を手伝っている。

 理由は、私が配属される前特ダネを狙っていた先輩が、事件に巻き込まれ、犯人にされそうになっていた先輩を偶然通りかかった渚さんが、本当の犯人を捜し、先輩の汚名を晴らした。

「…まぁね? でも、肝心な渚ちゃんには、一人の女性しか見えてないの。だから、あの時私を助けたのも私が、出版社の記者で渚ちゃんにとって利用できる駒だったからよ」

「…」

 それが、本当なら私に声を掛けてきたのも…利用する為?

 渚さんに出会ったから、もう一度、昴さんに気持ちを伝えよう3度目の恋をしてみようと思えたのに…

「滝川」

「…堂城先輩?」

 堂城が、名前ではなく苗字で呼んだ。

 それも、いつものオネェ言葉ではなく、「男:堂城誠也」の声で、滝川の名前を呼んだ。

「泉石渚は、確かに俺を出版社の記者と解ったうえで近づいてきた。だから、俺も、それを解ったうえで、自分を冤罪から救ってくれたあいつの誘いに乗った。だかお前の場合は違う。あいつは、純粋にお前の恋を応援する為に、お前に声を掛けた? そうだろう?」

「…」

 ☆

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