第42話
1月6日 16時 公園。
※ある人物からの情報提供で、悠の居場所を見つけ出し、自らの特殊能力である透明化で彼に近付きを意識を失わせ、この公園までまで連れてきた。
そして、滝川に彼を見つけたと連絡を入れた。
「…はるか! 悠! しっかりして」
「…」
これは夢だ? だって春が俺の名前を呼ぶはずがない。
だって、あいつはもう、俺の名前どころか…会いにきてもくれない。
だから…これは夢だ!
「悠! お願い目を開けて!」
んんんん? 本当に? コレ? 夢か? でも、夢なら夢でもいい。
今ならお前に手が届く。
「…春…俺…おま…」
俺は、夢の中で自分の名前を呼んでくれる春に手を伸ばす。
「悠! よかった! 心配したんだから!」
滝川は、目を開けた音無に、向かって真正面から抱きつく。
その顔は、寸前まで泣いていたのか目が真っ赤。
「…春? これはまだ夢なのか?」
目の前に現れた春に、悠は、まだ、自分は夢の中に居るかと錯覚してしまう。
だって…滝川春は、もう自分とは話もしないし、会わないとも言われた。
なのに…いま、その本人が、目を真っ赤にしながら、自分の名前を呼びながら自分に抱きついている。
「…夢じゃあないよ! 現実だよ!」
「…そうですよ! 彼女は、連絡がつかなく貴方を心配して、自分の仕事を放り出してまで、貴方を今まで捜していたんですよ! よかったですね? 悠くん見つかって」
一人のスーツ姿の男性が公園の入り口の門の所に現れた。
そして、その男性は、そのまま自分達の方に近付いてくると足元に小鉢に植えられた小さなワイルドストロベリー(花言葉:尊重と愛情 幸福な家庭 無邪気)をそっと置くと、そのまま立ち止まることなく反対側の門に向かって歩き始め…
「す…いや鳴海坂さん! ままっ待って下さい!」
一瞬、昴君って呼びそうになったが、寸前の所で抑え込んだ。
歩き出そうとしていた昴は、滝川の声でその足を止める。
「鳴海坂さん。今日は、悠を見つけてくれてありがとうございました」
抱きついていた悠から離れ、昴に向かって頭を下げる。
そして、顔をあげると、そのまま悠の左腕を取り自分の元に引き寄せる。
「鳴海坂さん! 私達、結婚するんです」
春の突然の結婚宣言に、悠は、春の顔を驚いたように春の顔を見る。
だけど、春は、そんな悠を無視して会話を続ける。
「だから、鳴海坂さんにも、私たちの結婚式に参加して欲しいんです。あぁぁのダメでしょうか?」
わたしは、今でもあなたが好きです。
でも、これからの未来を共に歩きたいのは…音無悠だけ。
それがようやく解った。
解るまでに、長い時間を無駄にしてしまったけど…
これでようやく、私も前に進める。
これでようやく貴方の恋心を忘れる。
これでようやく…悠を一人の男性として愛していける。
「勿論参加させて頂きます。結婚おめでとうございます」
「あぁぁぁありがとうございます」
春がもう一度頭を下げようとしたら…昴が今度それを制止した。
「滝川さん。僕達、友人なんですから、今まで通りで大丈夫でお願いします。その方が自分も嬉しいです。それに…その方が貴女の未来の旦那さんに嫉妬されずに済みますから?」
「あぁぁ! ゴホゴホ」
昴のこの発言に今まで二人の会話傍観していた悠が大きくせき込む。
「悠! ちょっと大丈夫?」
春は、悠の背中を優し撫でる。
「ありがとう」
春に感謝の言葉を告げる。
「滝川さん!」
昴が悠の背中を撫でる春の名前を呼ぶと同時にいきなり歌い初めた。
「貴方が、好きだと言ってくれた 君の頬が いつも以上に真っ赤に染まってる それだけで私は嬉しいよ」
昴君が歌ったのは、歌詞の一部。
しかし、滝川には、それだけで解った。
いま、昴が歌ったのは、ホワイトハニーの最新曲「プロポーズ」のサビの部分。
「…昴君。ありがとうございました。私、絶対幸せになります」
昴からの突然の唄のプレゼントに、折角止まっていた涙が再び流れ始める。
昴は、歌を歌い終わると今度こそ、反対側に出口に向かって歩き始めた。
滝川さん。結婚おめでとう。
それに、渚。君の言う通りだったよ。
彼だったら、彼女を絶対幸せにしてくれるよ?
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