第34話

14時20分 雫丘出版近くの商店街。

(俺は…春、お前が好きだ!)

 悠は、同期入社で、私が困っている時は、部署が、違うのに親身になって相談に乗ってくれたり、時には、アドバイスをくれたりした。

 でも、私は、そんな悠の事をただの飲み仲間としか思っていなかった。

 悠に告白されるまでは

(私は…悠の事…)

「悠! 悠!」 

「わぁ!」

 前をよく見ていなかったので、いきなり横道から現れた人と正面からぶつかり、相手が持っていた荷物が空中に飛び散り、そのまま地面に落ちていった。

「…あぁごめんなさい! すぐ拾います!」

私は、落としてしまった荷物を拾う為にしゃがもうとしたら、突然右腕を捕まれた。

「…そんなのは、あとで大丈夫ですよ?  滝川さん」

「えっ?」

 突然捕まれた右腕と名前呼び掛けに、私は、慌てて相手の顔を見た。

「…昴君」

 そこにいたのは、去年の12月24日に別れを告げた鳴海坂昴君だった。

 ※彼の恰好、ジーパンに長袖の黒ニット。

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