第30話

<答えが出ない秘めた想いは、どこにぶつければいいんですか? 私は、貴方の事がこんなに好きなのに、貴方はこっちの恋心に気づいてすらくれない>

「何だよ? あれ? 答えの出ない想いはどこにぶつければいいですかって?」

 あの紙を読んだ俺は、春に何も言わずにあいつの部屋から荷物片手に飛び出した。

 そして、誰も居ない川辺を一人泣きながら走った。

「俺は、滝川春の事が大好きだ! でも…」

 あいつは、もしかしたら禁断の恋をしているかもしれない。

 もし、そうだったら、俺は、あいつの事を軽蔑するかも知れない。

「俺は…あいつが好きだ」

 この春への気持ちに嘘偽りはない。

 でも…

ブブブぶぶぶぶぶ。携帯の着信音 

 ジャーケットの内ポケットに入れていたスマホに電話が掛かってきた。

 俺は、もしもの可能性を頭に描きながらポケットからスマホを取り、誰かの着信か確認する。

「…」

 スマホの画面に表示された名前は、電話の相手は滝川春。

 悠は、電話に出るべきか一瞬悩んだ。

 でも…覚悟を決めた。通話ボタンを押す。

「もしもし」

{悠よかった。電話に出てくれて}

「…春」

{悠! 今日はごめんね? 私から誘ったのに}

 電話越しの春は、俺が悪いのに、自分の方が悪いかのように自分に謝ってきた。

「春。お前は何も悪くない。悪いのは、勝手に帰った俺だ」

 俺は、自分の方が悪いと言ってくるあいつに俺の方が悪いとはっきり伝えた。 

 それでも、春は…俺は悪くないと一貫していってきた。

 それどころか、爆弾発言をしてきた。

「…うううん。悠は、なにも悪くない。悪いのは私なの。悠、あのね? あれ? 渡せなかったラブレターの下書きの一部なんだ」

「ええええええええええええええええええええ!」

 俺は、悠からの爆弾発言に周りに人が居る事、そして、自分が駅前に居る事を忘れて叫んでしまった。

 なので、周りに居た数人の男女が悠の事を何事かと見つめてきた。

 その様子に、悠は慌てて周りに頭を下げ、春の電話に会話に戻す。

「悠? 大丈夫?」

 自分の言葉に急に大きな声を出してしまった悠を心配する春が、心配そうに自分に声を掛けてきた。

「あぁ…うん。大丈夫」

「…ごめん。やっぱり嫌だよね? 例え、下書きとはいえ、友人のラブレター見るの。それも、渡さなかったラブレターだったら尚更嫌だよね?」

「ちち違う! 俺は…」

 俺は、一瞬でも春の事を軽蔑した事を悔やんだ。

{無理しなくていいよ? 悠の思っている通りだから。私ねぇ、好きな人が居る男性に、ラブレターを渡そうとしたんだから。軽蔑されて当然だよ? ごめんね? 悠には、恋愛相談まで乗って貰ってたのに。ごめんね? 悠には、もう迷惑かけないから。それにこの恋にはちょっと自分で区切りつけたから。じゃあ、もう悠には今度一切話し掛けないから心配しないで。じゃあ、さよなら悠!}

「ぁぁぁ春! ちっちょっと待ってくれ」

 電話を切ろうとした春を俺は呼び止めた。

「なに?」

 俺の呼び止めに怒りながらも、春は電話を切らずに対応してくれた。

 この言葉で春をつなぎとめる事ができなら…何度だって言ってやる。

「春! 俺は…お前の事が好きだ!」

「…悠。ありがとう」

「じゃあ!」

「私は、もう誰ともつき合うつもり気ははないの? だから、悠も、もう私に関わらないで」

 ブ_______

 一方的に切られた春からの電話。

 そして、つなぎとめる事ができなかった最後の彼女への赤い糸。

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