第25話

1月5日 20時 雫丘出版 玄関前

 昨日は、仕事始めだったこともあり、関係各社への新年の挨拶回りなどでほぼ一日が終わってしまった。

「はぁ…やっと終わった。毎年の事だったけど疲れる。あれ? あそこに居るのって」

 事務所でタイムカードを切り、会社を出ると…同期で飲み仲間の音無悠がぼっと空を見上げながら突っ立っていた。

『はぁ…』

 私は、そんな悠に、うしろからそっと近づくとそっと彼の背中を押した。 

「悠! 何してるの? こんなところで」

「あぁ春?」

 わたしだと気が付き、名前を呼ぶがそれっきり、何も反応がない。

「おい! 悠? だいじょ…」

 何も反応がないので、心配になり前方に周り彼の名前を呼ぼうとしたまさにその瞬間…

「ちょっとちょっと」

 悠がいきなり前に倒れ始めた。

 私は、慌てて悠の前に回り込み彼を支えた。

「悠大丈夫!」

「…春。ありがとう」

「ちょっと大丈夫?」

「大丈夫。ただ、仕事で疲れてただけから」

 わたしから離れた悠は、服に着いた汚れたごみを振り払うと私に頭を下げてきた。

「本当? なんか顔色悪いけど? ちゃんとご飯食べてる?」

 私は、悠の顔をじっと見る。

「食べてるよ? ちょっと待っていま証拠見せるから!」

 わたしの質問にバックからもぐもぐメロン(空袋)を取り出し、自分に見せてきた。

「ねぇ? まさかだと思うけど…それだけじゃあないよね?」

「そうだけど?」

 何か変な事言ったか的な顔をしている悠に、私は大きなため息をつく。

「…はぁ? ウチくる?」 

「えぇええええええええええええええええええええええええ!」

 わたしからの突然の提案に、何故か悠は大きな声で驚き自分の方を見てきた。

「ほほほほほほほ本当に行っていいのか?」

 そして、改めて言葉の真意を自分に確認してきた。

「いいから言ってるんでしょ? で、なんで悠はそんなに興奮してるの?」

 私は、なんで悠がここまで興奮しているのか分からない。

「するに決まってるだろう! じょじょ女性の家に行くんだぞ。そそれに…」

「それに? なに?」

 肝心な所で言葉を切ってしまった悠に、私は続きの言葉を尋ねる。

「それに…すす…」

「すす…?」

「あぁ! もうそんなのどうでもいいだろう! 行くなら早く行くぞ!」

 私の2度による訊き出し攻撃にとうとう悠が怒りだしてしまった。

「ちょっと待ってよ悠! わたしの家、そっちじゃあないんだけど」

 私は、自分の家とは、反対方向に歩き出した悠を捕まえる為に、急いで彼の後を追いかける。

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