第22話

突然腕を掴まれ、うしろに引き戻され、一瞬視界が奪われた。

「えっ!」

 でも、すぐさま百花の耳に大きな音が聴こえてきた。

 ゆっくり目を開けた百花は、目の前に広がった光景に言葉を失う。

 私が、さっきまで立って居た場所に、根元から木が倒れてきていた。

 もし、あのままあそこにいたら…自分は確実に怪我? 最悪の場合は死んでいたかも知れない。

 一方、道路には、木が根元から倒れてきた衝撃で大きく穴があいていた。

 それぐらい、今回の衝撃が大きかったのだ。

 だからこそ…この人が助けてくれなかったら…

「…あああの? ありがとうございました。貴方が助けてくれなかったら…」

「…自分は、ただ、当たり前の事をしただけですよ? 百花さん?」

「えっ?」

 もしかしたら、自分は死んでいたかも知らないショックと動揺で自分の事を助けてくれた人物の顔をしっかり見ていなかった百花は、突然、自分の名前、それも、苗字ではなく下の名前で呼ばれたことにびっくりする。

 でも、その人物の顔を見た瞬間…その人物の名前を大きな声で叫んだ。

「榎本さん!」

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