第20話

悠は、手にスマホを持ったまま窓の外を見つめる。

 すると、目の前を複数の警察官が通り過ぎていった。

「…警察!」

 その光景に、悠の頭の中にある可能性が浮かんだ。

(もしかして…今村敦が…)

 そして、同時にあの恐怖が再び襲ってきた。

(…殺される。早く逃げないと…)

「いたぞ! 捕まえろ!」

 もしかしたら、今村敦が自分の居場所を見つけ出し殺しにきたのではないかと恐怖で再び震えていた悠は、窓の外から聞こえてきた警察官の声に再び窓の外を見る。

 すると、二人の警察官が黒いフードを被った長身の男性を後ろから腹いじめにしていた。

 その様子に急に緊張の糸が切れたか、それとももう殺される事はないと解ってホッとしたのかそのままテーブルに倒れ込む。

 でも…悠は大事な事を忘れていた。

 手にスマホを持っていた事を…そして、自分がコーヒーを全て飲んでいなかったことに…

 だけど、悠は、気が付いていなかった。

 その人物が、今村敦ではない事に。

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