第19話

(殺される!)

 今村敦と彼の仲間と思われる仲間のスーツの男のやばい話を訊いてしまった悠は、扉が開く前に慌てて事務所から逃げ出した。

 そして、目に入ったカフェに逃げ込んだ。

「いらっしゃいませ! ご注文はお決まりですか」

「コーヒー一つお願いします」

「350円になります」

 悠は、財布からぴったり350円を取し、お金を払う。

「ありがとうございます。店内でお召し上がりますか? それともお持ち帰りですか?」

「店内で!」

「かしこまりました。では、席にお持ちしますので、お好きな席にどうぞ」

 悠は、スタッフから番号札を受け取ると店内の一番奥の席に腰を下ろした。

 そして、自分を落ち着かせようと大きく深呼吸をして、さっき、事務所で訊いた彼らの会話を忘れない内に取材ノートに書き写す。

 だが、恐怖で上手く字が書けない。

「ダメだ! 上手く書けない!」

 折角書いたノートのメモをボールペンで上から黒く塗りつぶした。

 それを何度かやり直していると…自分の席にコーヒーをトレイに載せた女性スタッフがやってきた。

「コーヒーをお持ちしました」

 悠は、広げていた取材ノートを閉じ、ペンと一緒にカバンに戻した。 

「ありがとうございます」

 コーヒーを持ってきた女性のスタッフは、コーヒーをテーブルに置くと代わりに受付札を持ってその場をあとにした。

 悠は、スタッフが持ってきたコーヒーに早速口をつける。

「…美味しい!」

 コーヒーは冷たさが、殺されるかも知れないと恐怖におびえていた悠の心をほぐしてくれた。 

「あぁぁ! そうだ! 百花先輩に連絡しないと! 電話電話! あった! ん?」

 コーヒーを飲んで、少し心が落ち着いた悠は、百花に電話をする為、バックの中に仕舞い込んだスマホを捜し出し、百花に電話しようとした窓の外が急に騒がしくなった。

『そっちに行ったぞ! 追え! 絶対逃がすな!』

 ☆

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