第15話

「堂城! ちょっと待って!」

 出て行こうとした堂城の腕を掴む。

「水川!」

「…梨々花とは、もう本当にやり直すつもりはないのか?」

「…」

 梨々花はこいつに、何も何も話していないのか。まぁ、話せないよな?元カレが、もう離婚しているとはいえ、既婚者の女性と不倫してたんだから。

 例え理由が…脅迫結婚だったとしても。

 だどしても…こいつは…その部分をなしにしても…俺が梨々花を愛していないその事実だけは知る権利はある。

「…水川。俺、結婚するんだ。今年の春に」

 水川は堂城の結婚というその一言に掴んでいた手をゆっくり離す。

「えっ…結婚? お前が?」

「あぁ! 梨々花と別れて、1年後、新しい彼女ができたんだ。で、その彼女と10年もの交際期間を得て、今年の春結婚するんだ」

 正確には…実際に結婚を誓い合ったのは(俺23歳)(樹利亜22歳)の時だ。

「そっか。10年も前に」

「あぁ…いまの彼女とは、大学時代に出会ったんだ。だから、梨々花には悪いけど、俺はとっくにあいつの事は愛してもいないし、なんなら眼中にもない。それどことか、俺にとってあいつは、ただの友人でしかない。勿論、あいつも同じだ」

「…」

「水川…お前…本当に気が付いてないのか?」

 堂城はしゃがみ込みしまった水川をさらに追い込む。

「えっ? 何を?」

 一方、堂城の言葉の意味が解らない水川は首を傾げる。

「お前…梨々花の事好きだろう?」

「んあなななななくりかえしなななそんな訳ないだろう! 梨々花は幼馴染だぞ! 俺がりりりりりかの事好きな訳ないだろう! 今すぐ俺の前から消えろ!」

 屋上の扉の方まで堂城を連れて行き、強引に室内に押し込む。

「水川! お前が呼び止めたんだろう!」

「そんなの知るか! いいから早く行け!」

「はいはい邪魔者は消えますよ? でも…水川、本当に梨々花の事が好きなら気持ち、ちゃんと伝えろよ? じゃあないあいつ、結婚するぞ! 婚活サイトで出会った年下イケメン医師と」

「どどどどど堂城! なんだそれ」

 水川は真実を訊こうとしたが、時すでに遅く、堂城はもう階段を下りてきた。

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