第19話
_ドーン_
『……んん』
『……はぁぁ』
突然の出来事に、息を大きく深呼吸しながら彼女が、自分の顔を覗き込んでくる
『……んんん』
あの日の俺は、自分の理性を止める事ができなかった。
自分の名前を訊いてきた彼女をいきなり近くにあった壁に押し付け、彼女の唇に自分の唇を重ねた。
それも、彼女の言葉、意思を無視して、彼女の息が続く限り何度も唇を重ねた。
キスをしている間に、彼女が逃げないように、キスを重ねる度、自分の体をドンドン彼女に密着させていき、最後のキスを終え、唇を離した時には彼女の顔がすぐ目の前にあった。
ここまで体を密着され何でも唇を奪う様に重ねられた彼女は、意識が少しもうろうとし目も少し虚ろいていた。
そんな状態の彼女を見て、やっと自分の暴走を自覚した俺は、慌てて彼女をその場に座らせた。
彼女を座らせて3分後。
『……あれ、私…どうしたんだろう? あぁ!』
彼女が意識を取り戻した。
けれど、すぐに自分に起こった出来事を思い出したのか頬が赤く染まり始める。
そんな彼女の様子に俺は、周りの目も気にせず土下座をした。
『本当にすみませんでした。俺はは、貴方の一番大切な物を勝手に奪ってしまいました。どんな罪でも受けます。本当にすみませんでした」
すると、頭上から思いもしない言葉が返ってきた。
『……だったら、責任取って下さい! 私の大事な物を奪った責任」
『…えっ!』
彼女の言葉に、驚いて顔を上げようとしたら、彼女が自分の方に、倒れ込むように唇を重ねてきた。
『最後まで責任取ってね? 嘘つきお兄さん』
それからは、正直よく覚えていない。
だから、1週間後、彼女から御礼の手紙と一緒に婚姻届け(彼女の欄は記入済み)が届いた時は、心臓が飛び出しそうになった。
それ以上に、いま自分を脅かしているのは、いま僕の目の前にある一通の手紙と一緒に送られてきた一枚の写真。
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