第18話

「美緒。大好きだよ」

 そう、美緒に告げて美緒にキスをした。

 そして、お互いの息が続く限り何度も何度も唇を重ね、互いの熱を奪い合った。

 その間も美緒の体がソファーから落ちないないように強く抱きしめていたのに、いつの間にか、自分が彼女を上から見下ろしていた。

「美緒」

「……永輝さん。私達って夫婦だよね?」

「……当たり前じゃあないか! 美緒急に何言いですんだ?」

 唇を重ねていた美緒が、ゆっくり唇を離し、自分を真剣な目で見つめてくる。

「……ごめんそうだよね。はぁはあ私、永輝さんになに訊いてるんだろうね。ごめんいまのは忘れて」

「……」

 悲しそうに、苦しそうに、そして、自分を責める様に、自分に口づけをしてくる彼女に、永輝は心が苦しくなる。

 理由は、美緒の問いかけ『私達、夫婦だよね?』に即答できなかったから。

 普段の自分なら速攻で答える事ができるのに、今日は、どうしても速攻で答える事ができなかった。

 きっと、一瞬、自分の脳裏に、あの日の裏切りが浮かんだから。

 あの日、僕は、美緒を裏切った

 あの日の僕は、壊れていた。

 美緒と言う愛するべき奥さんが居るのに、そんな彼女を裏切って他の女性に心を奪われ、その女性に熱いキスと抱擁をしてしまった。

 そう、俺はその女性と男女の関係を持ってしまった。

 そして、あろうことかその女性に『結婚しようと』言ってしまった。

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