裏切り

第17話

『危ない所を助けていただき、本当にありがとうございます』

『気にしないで、俺、体だけは丈夫なほうだから。それより君に、怪我がなくて本当によかった』

『本当にありがとうございました。あの? よかったらお礼させてください』

『そんなの別に気にしなくていいよ。それより、本当に警察に行かなくていいの?』

『……はい。事を大きくしたくないんです』

『でも。一応、被害届だけでも出した方が……』

『ご親切にありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですから』

『そう? 被害を受けた君がそこまで言うなら、もうこれ以上は言わないけど、本当にいいの?』

『はい。ご心配ありがとうございます。それであの?』

『?』

『お礼がダメならせめて、名前だけでも教えて貰えませんか?』

『俺の名前?』

『はい。自分を助けてくれた方の名前を憶えておきたいんです。あの? ダメでしょうか?』

『……』

『やっぱりダメですよね? すみません。いまの忘れて下さい』

『ダメじゃあない』

『!?』 

 ☆ ☆ ☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る