第14話

高校時代の渚君は、いつもクラスの人気者だった。

 それなのに、私との交際で、これ以上彼に、迷惑を掛けたくなかった。

 だから、父親の転勤は、渚君と別れる手段と一番最適だった。

 だって、その時、渚君に直接会って別れを告げていたら、きっと涙で彼の顔が見えなくて、いまでも忘れる事ができなかったと思う。自分から別れを切り出すのに。

「だから、びっくりしたよ。彼と再会した時は。もう、会うつもりなかったから。けど、いま思うと、彼に、永輝さんとの結婚の報告ができてよかったかも。渚君もおめでとうって言ってくれたんだよ」

 そのまま、椅子に座ってる永輝の背中に抱きついた。

(……永輝さん。私、信じてるから。じゃないあないと私……)

 抱きついた永輝の背中に、本心を本人に聞こえないように小さく呟く。

 彼に、語った本音と嘘に美緒の心は揺れる。

 それを隠すように、美緒は永輝の背中をギュウっと抱きしめた。

 ☆ ☆ ☆

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