第13話

「礼儀正しい人だったなぁ」

「永輝さん。誰が礼儀正しい人なの?」

「!?」

 キッチンに逃げ込んでいたはずの美緒が、いつの間にか戻ってきていた。

「美緒! もう大丈夫なのか?」

「……うん。永輝さん、あのね……」

「美緒!」

 永輝に何かを話そうとした美緒の言葉を遮るように永輝が、彼女の名前を叫ぶ。

「永輝さん!?」

「君が、話したくないなら無理して話せなくていいよ」

 彼の言葉に、一瞬心が動きそうになった。けど…

「永輝さん。永輝さんが、今日会った私のその友人って名乗った人、私の元カレなの」

「!?」

 彼女の口から飛び出した衝撃な発言に、永輝は声を失ってしまう。

「ごめんね。彼、泉石渚くんとは、高校二年の夏まで交際してたの。けど、彼とは私の転校で自然消滅したんだ」

 美緒の言葉に嘘はない。嘘はないが一つ言葉が足りない。

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