第12話

リビングに一人っきりになった永輝は、彼、泉石渚に会った帰宅時の事を思い出していた。

『あの? 岡宮永輝さんですか?』

『……そうですけど?』

 仕事を終え、会社から出てきた永輝に一人の男性が声を掛けてきた。

 そして、その男性は、永輝の名前まで知っていた。

 しかし、永輝自身はこの男性を知らないので不審感しか。

 そんな永輝の様子に、

『あぁ! 初めまして、古閑美緒さん、いや、いまは岡宮美緒さんの学生時代の友人で、泉石渚と言います』

 満面の笑顔で自己紹介をする。

 それに、さっきまで不信感を抱いていた永輝も、安心したように彼の顔を見詰める。

『美緒の友人の方でしたか? 初めまして、岡宮永輝と言います』

 永輝は、渚に向かってそのまま頭を下げる。

『こちらこそ。急に、それも会社まで押しかけてすみません』

『泉石さん。それにしてもよく自分の職場が解りましたね? あぁ! もしかして美緒に訊いたんですか?』

『……』

『…泉石さん?』

 急に黙り込んでしまった渚の名前を呼ぶ。

(……よく、そんな口がきけますね?)

『…泉石さん?』

『今日、六年ぶりに、偶然美緒さんと再会したんです。その時、旦那さんの仕事、職場の事も教えて貰ったです』

『そうだったんですか』

『すみません。美緒さんに教えて貰ったとはいえ、ストーカーみたいな事をしてしまったので、改めてすみませんでした』

 もう一度、永輝に対して頭を下げる。

『泉石さん。頭をあげて下さい』

『ありがとうございます。あぁ、結婚おめでとうございます。これ、どうぞ』

 渚は、バックから小包を取り出し、永輝に差し出す。

『いいんですか?」

『はい! よかったら、み……いぇ奥様にも』

『美緒で大丈夫ですよ?」

 いきなり、奥様呼びに変えた渚に……永輝は笑顔で今まで通りで大丈夫ですよと言葉を返す。

『ありがとうございます」

 頭を下げる渚。

『でも、本当、美緒さんはいい旦那さんを貰って羨ましいです。自分は、まだ独身なので。あぁすみません! 旦那前でこんな愚痴を言ってしまって!』

☆ ☆ ☆

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