第74話

渚が、頭を下げた後、会見場にきていた全員の中での話し合いの結果、どうい訳か、滝川が代表して二人に質問する事になってしまった。

 一方、突然指名されてしまった滝川は、自分が指名された理由が分からず混乱していた。

(まさか、自分がホワイトハニー、それも穎川泉の熱狂的なファンってバレてる)

 一抹の不安が滝川の頭をよぎる。

 しかし、司会者である泉石渚から名前を呼ばれ、覚悟を決めて立ち上げる。

(もう、こうなったら…)

 滝川の自分の質問が、この場をかき乱す事になろうと思いもしなかった。

「…雫丘出版の滝川春と言います。お二人にと言うか、穎川泉さんに質問します。どうして、今更こんな危険を冒してまで表舞台に姿を現したんですか? 正直言って姿を隠していれば、ホワイトハニーの他のメンバー、そして貴方の事をずっと応援してくれていたファンにも、こんな残酷な真実を知らずに済んだのではないんでしょうか?」

 自分も、その一人だったと訴えかけるように、滝川は、穎川に質問を投げかけ、席に着いた。

「…」

「…最後に、とんでもない質問が出てきましたね? それにしても穎川様は、引退した今でも、愛されているのですね? でも、今日の件で、それも全て水の泡でしょうね? あぁすみません。自分であれほど時間がないと言っていたので。それでは、穎川様。ご回答をお願いします」

 滝川の思いもしない質問に、無言になってしまった穎川をよそに、渚は、ニコニコしながら穎川泉に、マイクを向ける。

「私は…」

 今日、穎川泉がここにきたのは…彼女…南浜樹利亜からの手紙を貰ったからだ。

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