第73話

すると、渚の心の声が聴こえたのか、穎川が自分の事を見てきた。

 そして、渚だけに聴こえるように何かを呟いてきた。

(…ありがとう)

 渚は、穎川の「ありがとう」に、満面の笑みを浮かべながら、彼女に対して自分の左指で、手を振り返す。

 けれど、その左の薬指には、さっきまでなかった銀色の指輪(中央に小さなダイヤ)が光り輝いていた。

(…えっ! 左の薬指に指輪!)

 自分の宣言を笑顔で見つめ、拍手を送ってくれた渚に、「ありがとう」と呟いたその返事に、指輪を見せつけられた穎川は、突然の事に思わず叫びそうになったがどうにか抑え込んだ。

 彼、独身だよね?

 穎川が、渚の事で頭を抱えていると後ろから突然声が聴こえてきた。

「ゴホゴホ。記者の皆さん。質問は、もうよろしいですか?」

「いいえ! まだやります」

 固まっていた記者同時にしゃべる。

「そうですか? でしたら、時間の都合上、すみません。質問は残り一つでお願いします。なので、どの質問するか、決めて貰えませんか? それとも、他の質問になされますか?」

「時間頂いてもいいですか? みんなで少し考えます」

「解りました」

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