第72話
「はぁはぁぁぁぁぁぁぁっぁはぁ龍治さん。もうこれ以上…んんんンンン」
何度も、触れては離してを繰り返して行く内に、穎川は、意識が朦朧としてきた。
そんな穎川に七瀬は…覚悟を決めて自分の想いを伝える。
「…泉…俺と結婚しないか?」
「…はい」
「泉」
「龍治さん」
お互いの名前を呼び合い、お互いの顔を見つめ合う様に、唇を重ねようとした瞬間…
『…お二人さんご婚約おめでとうございます』
『…ありがとう。でも、貴方も悪趣味だね? ずっと見てたの?』
『…えぇ! ずっと見てましたよ? でも、見てたのは、自分だけではありませんよ?』
『!? 眩しい!』
_パシャパシャパシャパシャ_ カメラのシャッターの音_
「七瀬さん!? 結婚ってどういう事ですか! そこに居るのは、穎川泉さんですよね? なんで、穎川泉さんがここに居るんですか! やっぱり離婚原因って彼女との不倫なんですか? だとしたら、さっきの元奥様の話は嘘だったんですか?」
「七瀬さん。貴方は、元奥様に何も感じないんですか? 一か月で、不倫相手と再婚って、元奥様を侮辱してるとしか思いません」
「七瀬さん。元奥様に嘘をつくよう強要したんですか?」
「それは…」
「誤解です。七瀬さんは、南浜さんに嘘をつくよう強要なんてしていません。それどころか、南浜さんは、自分達の不倫のせいで離婚に追い込まれた被害者なのに私を許すどころか、彼と結婚して幸せになって欲しいとも言ってくれました」
答えに戸惑っている七瀬を押しのけて、穎川が記者に向かって樹利亜は、今回の件には関係ない、それどころ、再婚を樹利亜がアシストしてくれたとはっきり宣言した。
「…えっと…穎川さんは、七瀬龍治さんと不倫していたんですよね?」
「はい! 私は、七瀬龍治さんと3年前から彼と不倫していました。けれど、いまは、一人の男性として彼を愛し、今は七瀬さんと幸せな家庭を築きたいと思っています」
「…」
泉からの突然の結婚発言、そして、樹利亜の二人の再婚を応援する発言に、記者、そして当事者である七瀬龍治さえ開いた口が塞がらない。
だけど、そんな中一人だけ、穎川に拍手を送っている人物が居た。
そして、誰にも聴こえない小さく一言。
(…葉牡丹:はぼたん)
※葉牡丹の花言葉:「祝福」「愛を包む」
☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます