第75話

拝啓 穎川泉様

 空っ風が吹き、ますます寒さが身に染みる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?

 穎川様。報告が遅くなりましたが、先月、七瀬龍治離と調停の上離婚が成立いたしました。

 それと、わたしごとではありますが、来年の夏に元彼と結婚式を挙げる事になりました。

 ですので、七瀬龍治は、貴方に差し上げます。

 私には、一生の愛を誓いあった最愛の男性が居ますので。

 穎川様。私は、ずっと前から貴方の関係を知っていました。勿論肉体関係の事も。

 けれど、自分はそのことには全く興味がないのでそのままにしておきました。

 それどころか、一日も早く、貴方に七瀬龍治を略奪して欲しかったのであえてそのまま放っておきました。

 だって、あんなに自分の昇進の為だけに、親友の恋人を無理やり妻にするような男をあんなにも一途に愛する女性は居ないこれから先絶対現れない。

 この機会を逃したら、私は、絶対あいつと離婚できない。

 その為に、私は、貴方を利用する事にしました。

 そのおかげもあって、私達は、無事に離婚する事ができ、私も本来の恋人と本来の恋をスタートさせる事ができました。

 本当に、ありがとうございました。

 これからの穎川様の幸せを願いつつ、お礼の言葉とさせていただきます。


                                                                 南浜樹利亜

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