第63話

10分後。会見場。

「…お待たせしました」

 帽子を深々く被った堂城は、ステージ上の七瀬の隣に持ってきた椅子を置く。

「ありがとうございます」

「では、自分はこれで失礼します」

 七瀬と樹利亜に、顔を見られないように、素早くこの場から消えようとした瞬間…

(…ダズンローズ)

※参考文献:インターネット花キューピット

 1ダース(12本)の薔薇を恋人に贈る、欧米の風習。

 12本の薔薇には、それぞれ、感謝・誠実・幸福・信頼・希望・愛情・情熱・真実・尊敬・光栄・努力・永遠の意味が込められています。

 そして、これら全てをパートナーに誓う「ダズンローズ」は、ウェディングブーケの起源と言われています。

「!? お前…ま…」

 堂城だけに聴こえる声で、「ダズンローズ」と囁いた司会者の男に、堂城は、ある人物の名前を呼び掛けようとした。

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