第60話

「七瀬さん。元ホワイトハニーの穎川泉と妻が居る事を隠して、交際していたって本当なんですか?」

 七瀬龍治が、マスコミに全てを打ち明ける前に、元ホワイトハニーの穎川泉が、アイドル時代、警察官僚と交際していた。でも、相手には妻が居たと週刊誌に大きく掲載された。

 堂城は、この記事が出た瞬間、泉石渚の顔が浮かんだ。

 あの男ならあり得る。しかし、その考えはすぐさま崩れ落ちた。

 理由は…この情報を週刊誌に売ったのが、七瀬が守ろうとしていた穎川泉本人だった。

「…はい、本当です。穎川泉さんと妻が居る事を隠して交際していました」

 七瀬は、言い訳する事なく、真実だと認めた。

「それって、不倫ですよね? 奥様に申し訳ないとは思わなかったのですか?」

 息を飲まずに女性誌(白蓮:びゃくれん)の女性記者が突っ込む。

「…妻とは、先月離婚しました。元より、妻には結婚を前提に交際をしていた恋人がいました。それを、僕が強引に略奪しました。なので、妻は、自分の事を愛するどころか憎んでいたと思います」

「…えっ! それって…どういう事ですか?」

 突っ込んだ記者も、七瀬の返答に言葉を失う。

「そのままですよ? 妻には、結婚を誓い合った婚約者が居居ました。そして、その相手は、僕の…」

 _ドン_

 七瀬が、続きの言葉を口にしようとした瞬間、会見場に大きな音が響き渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る