第59話

あの後、堂城は退職願いを上司である犬塚に提出した。

 しかし、その退職願いは受理されるどころか、その場でビリビリに破かれ、代わりに一輪のピンクのリナリアを堂城の顔に押しつける。

『りりり梨々花!?』

 どうして梨々花が…この花は…樹利亜の…

『…7年目越しのプロポーズ? 堂城君、きみにも、こんなロマンチックな愛の告白ができるんだね?』

 なんで、梨々花がこの事を知ってる? まさか…

『堂城君。いやぁ、堂城誠也副編集長!? きみがいま守らないといけないのは七瀬龍治? 違うでしょ!』

『…』

 梨々花に、この情報を教えたのは、鳴海坂昴? いやぁ、違う。

 梨々花は、偶然昴にに会ったに過ぎない。

 だから、梨々花に俺の事を話したのは…

 堂城が、梨々花が誰から、俺達の会話を聴いたのか、見当をつけた瞬間…梨々花が、堂城の頬を突然殴ってきた。

「梨々花!」

「貴方は、何もわかってない! どうしてもっと周りを見ようとしないの?」 

 全てを見透かしている梨々花の言葉に、堂城は、七瀬から貰った手紙の最後に書かれていた言葉を思い出す。

 _堂城。俺みたいになるな!_

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