第50話

「先輩?…この花? ブルースターですよね?」

 ※ブルースターの花言葉は、幸せな愛。

「…」

 堂城は、昴からのブーケを見て、すぐに使われている花を当てた滝川に驚きながらも、好意を抱く鳴海坂昴に会いにいく為に、毎週のように赤い薔薇を買いに行って滝川なら、ブルースターだって知っていてもおかしいくない。

 だけど、同時に、どうして鳴海坂昴は、滝川に、ブルースターを贈ったのだろうか?

 あいつらが、本気になれば…滝川春ぐらい簡単に突き離せる。

 けど…鳴海坂昴は…滝川春にだけにはそれをしなかった。

(鳴海坂…お前たちは…本当に悪魔なのか? いや? 違う!)

 二人と深く関わるようになって、堂城には、鳴海坂…いやぁ、泉石渚がどうしても心の底から悪に染まってるとはどうしても思えない。

 それぐらい、この二人に出会った事で、自分の人生が動き出した。

「先輩…私…本当は…」

「…俺達は、同じタイミングで樹利亜を好きになった。そして、俺は、親友の為に樹利亜への好きな気持ちを無理やり押し殺した。でも、やっぱり駄目だった。忘れようとすればするほど自分の中で樹利亜の存在が大きくなっていった」

 半分嘘で半分真実の正直な想いを語る。

 本来なら、全てを打ち明けた方がいいのかも知らない。

 だけど、いま、真実を打ち明けてしまったら…

「…私、いまでも、叶うなら、昴さんの彼女になりたい。でも、もう昴さんには、婚約者の樋宮灯さんが居る。だから、もう…」

 言葉を遮るように、堂城は、嘘ではない今日これから樹利亜にやろうとしている事を打ち明けた。

 言葉を信じて貰うために、頬を少し赤く染める。

「…6年前、俺は、親友の為に、樹利亜への恋心を自分の中に押し殺した。でも、もう、自分の気持ちを偽らない。滝川…俺、樹利亜に告白しようと思ってるんだ」

「…」

 堂城の言葉と表情に、嘘偽りはないと思う。

 けれど、私は…先輩とは違う。

「…滝川、どうして人を好きになるんだろうな? 必ず、その裏で、お前みたいに傷つく人間だって居るのに。それにしても鳴海坂昴もひどい男だよなぁ? お前に、花なんか贈って何様のつもりなんだろうなぁ?」

「昴さんは、悪くありません。だって…ブルースターは、私の…一番好きな花だから。先輩!? 私…先輩みたいに昴さんに、自分の気持ち伝えます」

 昴に告白する決意を決めた滝川の頭をクシャクシャとかき乱す。

「なにするんですか!」

「お前が、あんまりにも純粋で、可愛いくって、素直だから」

「もう、先輩がその気なら」

 滝川が、仕返しするかのように、堂城の脇腹を殴る。

「痛い!」

 脇腹を抑えながら、その場にしゃがみ込む。

「へへへへへへへへへへへ。お返しです」

「…春ちゃん。それは反則だよ?」

 仕返しが成功し、満面の笑みを浮かべている滝川に、堂城に春ちゃんと声を掛ける。

「先輩! 私を出し抜こうなんて、10年早いですよ? 罰として樹利亜さんを私に紹介してください!」

 先輩の想い人である樹利亜さんに一度会ってみたい。

 そして、先輩の昔話を訊いてみたい。

「解った! でも、紹介するのは、互いの告白が終わった後ねぇ? それに、樹利亜の予定も訊かないといけないし」

「解りました。約束ですよ? じゃあ、私、コレ、事務所に返してきますね?」

 借りてきた箒とちりとりで、ゴミの処理するとそのまま、給湯室から出て行った。

「…お前は、俺みたいになるな! って、七瀬…俺も…お前と同罪なんだよ?」

 七瀬からの手紙を取り出し、真ん中からビリビリと破り捨てた。

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