第49話

「滝川。お前リナリアの花言葉知ってるか?」

 突然の話題転換に、滝川は咄嗟に解らないと答えた。

 すると、給湯室の扉が開く。

「!?」

 滝川は、いきなり扉が開いた事よりも、突然自分に抱きついてきた堂城の行動に驚いた。

 堂城は、普段から遊びでよく自分に抱きついてくる。

 けれど、そのいう時はいつも決まって、滝川が何かしら失敗した時にやられる。

 だから、滝川自身も「もう止めて下さい」と笑いながら注意するのが、私達の毎回のやり取りだ。

 しかし……いま、自分に抱きついている堂城は、いつもの遊びで抱きついてくる彼とは違った。

「…滝川。リナリアの花言葉は、幻想・乱れる乙女心・この恋に気づいて・私の恋を知って下さい。リナリアは、樹利亜が一番好きな花で、俺達にとっていや…俺にとって彼女そのものだった。んって、ごめんな! 急に抱きついて」

「そんな事は、いまはどうでもいいんです。先輩!  樹利亜さんと先輩は、どういう関係なんですか?」

 謝って離れようとした堂城に、滝川は、そんな事よりいまは樹利亜との関係を教えて欲しと逆に襲い掛かった。

「…樹利亜は…俺のいやぁ、俺の親友の元奥さんだよ? 先月離婚したらしいけど」

「えっ! 親友の元奥さん!? えっ! えつっとちょっと待って下さい。樹利亜さんと先輩は、恋人じゃあないんですか?」

 思いもしなかった衝撃な告白に、滝川の思考は、完全に混乱する。

 だって、編集長との話が本当なら、樹利亜さんと堂城先輩は…どういう事?

 頭を抱えている滝川に…堂城は、昴から渡して欲しいと預かったあのブーケをテーブルの上に置いていたバックの中取り出す。

 そして、自分にしか聴こえない声で囁く。

(…婚約者だった。七瀬龍治に突然奪われ、樹利亜が脅迫結婚に追い込まれなければ…) 

 自分の頭の上に、何か重みを感じた滝川がゆっくり顔を上げる。

「先輩? なにかいま言いました?」

「なに? あっそうだ! 忘れる所だった。コレ。鳴海坂昴が、お前に貰って欲しいって」

 堂城は、滝川に、例のブーケを差し出す。

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