第22話
※現在に戻る。
「プロポーズで、彼女に赤い薔薇を100本贈りたい?」
「ダメでしょか? 彼女花の中でも、特に赤い薔薇が好きなんです。だから、サプライズで彼女にプレゼントしたいんです」
6年ぶりに、フラワーショップホワイトに、「菜々」の営業で訪れた樹利亜は、どうい訳か店長である白川瑠璃に店に入るなり、「取材をしたいなら、3時間後、ここで働いてからにして」と、強引にエプロンをつけさせられて店先に追い出されてしまった。
「ダメではないんですが。もしよろしければ、108本にしませんか? プロポーズなされるんですよね?」
「はい。でも、どうして108本なんですか?」
男性は、意味が解らず首を傾げる。
「薔薇の花束には、1本1本に意味が込められているんです。例えば、1本だと、一目惚れと貴方しか居ない。100本だと、100%の愛情です。そして、108本の薔薇の花束の意味は…」
樹利亜が、例として、1本と男性が本来注文しようとしている100本の薔薇の花束の花言葉を説明した後に、108本の花束の花言葉をを告げようとしたその瞬間…
「結婚してくださいですよね? 樹利亜さん」
「!?」
樹利亜の後ろから、スーツ姿の男性が自分達の会話に割り込んできた。
「あら、渚君。いらっしゃい」
すると、店の奥から、白川がひょっこり姿を現す。
「こんにちわ、白川さん。昴、居ますか?」
「…」
白川は、申し訳なさそうに渚を見つめる。
「…あぁ! もしかして、昴、今日休みですか?」
「あぁ…うん。ごめんね」
「いえ? 気にしないで下さい。だったら、これあいつに、渡してもらえますか?」
渚は、白川に、開封厳禁と書かれた白い封筒を差し出す。
「昴君に?」
「はい! あいつに渡して貰えませんか?」
「あぁぁあの渚君?」
「はいどうしましたか?」」
目の前に差し出された白い封筒を見ながら恐る恐る尋ねる。
「やばい物は入ってないわよね?」
「ふっふふふはぁはぁああああああ」
渚は、白川のその様子に、大声で笑い出す。
「渚君!?」
「白川さん! そんなこと心配してたんですか? 大丈夫ですよ! これ昴に頼まれた市内近郊の結婚式場のパンフレットですから」
「結婚式場? 昴君達の?」
昴と灯が結婚を前提に付き合って居る事は、会社の全員ならみんな知っている。
そして、二人から、近い内に結婚式に挙げると告げられていたので、なんで、今更、渚に結婚式場の事を相談するのか白川には理由が分からなかった。
だからこそ、白川は、「昴君達の?」と彼に問いかけた。
「当たり前じゃあないですか? 他に誰が居るんですか? 白川さん周りで結婚する人が?」
渚は、不思議そうに首を傾げる。
「…」
その反応に白川は、言いたい事を口の中で押しとめる。
だって、こればっかりは、もう自分にはどうする事のできない事だから。
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