第16話

「堂城様。お連れ様がご到着されました」

 仲居さんの声が、襖の向こうから聴こえてくる。

 先に、客間に案内された堂城は、その声に、自分の唾をゴクリを飲む。

(あの向こうに、彼女が居る。彼女は、きてくれた)

「堂城様? 堂城様!?」

 堂城が、妄想の世界に入り込んでいる間に、仲居さんが自分の前に新しいお茶を出してくれていた。

「すみません。少し、ぼっとしてしまって」

「…堂城様。時には、休息も大切ですよ? では、わたくしは、お食事の用意がありますのでこれで失礼します」

 一礼すると、仲居は客間から出て行った。

 すると、それと入れ替わるように、背中まで伸びた黒髪。そして、その黒髪が映える胸元と腕が少し透けたシースルーの赤い花柄ワンピースを着た女性が、堂城の居る客間に入ってきた。 

「…樹利亜?」

 自分の目の前に居るのは、本当に自分の知っているあの樹利亜?

「…」

_タッタタギュっ_

「堂城君!? ずっと会いたかった!?」

 抱きついてきた樹利亜を堂城は、優しく受け止める。

「…俺も会いたかった。おかえり樹利亜」

(あぁ…やっぱり…樹利亜だ)

「ただいま」

 堂城の胸の中で、樹利亜が優しく微笑む。

★★

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