第14話

「あれ? 七瀬先輩? 今日は早いですね?」

 デスクの上を片付け帰宅の準備をしていると後輩の文月蓮司が、デスク越しに話しかけてきた。

※樹利亜の仕事は、出版社の営業。

「文月くんお疲れ。今日は、大事な用予定があるの?」

「へぇ? もしかしてデートですか?」

 ニヤニヤしながら、文月が面白半分に問いかけてくる。

「もうなに言ってるの! 私、既婚者だよ! じゃあまた明日ね!」

 樹利亜の旦那である七瀬龍治は、警視庁捜査一課の刑事。

 そして、樹利亜が龍治と結婚している事を職場の人間は、知っている。

 バックを持って立ち上がり、扉に向かって歩き出そうとした樹利亜をうしろから同じく立ち上がった文月がいきなり抱きしめた。

「…文月君!」

「先輩は…寂しくないんですか?」

 樹利亜は、文月の突然の行動に驚く。

 でも、私とあいつの関係は仮面夫婦。

 それに、私はそもそもあいつのことを旦那とは思っていない。

 なので……

「ありがとう。けど、わたしなら大丈夫だよ!」

 そう言って文月の両手を手に取り、引き離そうとしたら……

「…七橋先輩……先輩の旦那さんがあの七瀬龍治さん解ってます。けど……」

 ☆☆

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