第7話

「あの? 七瀬樹利亜さんですか?」

 泉石渚と待ち合わせをしている裏路木の居酒屋で、彼を待つ間ビールを何杯が飲んでほろ酔い気分になっていると、いつの間にか到着していたのか遠慮がちにスーツ姿の渚が自分に声を掛けてきた。

 樹利亜は、手に持っていた酒をテーブルに置き、男性の方を振り向く。

「そうですけど? 貴方は?」

「初めまして泉石渚と言います。えっと…」

 渚は、樹利亜の正面のテーブルに腰を下ろす。

「樹利亜でいいよ?」

「えっと…それは…」

 樹利亜からの提案に渚は困った表情を見せる。

 渚のそんな様子に樹利亜は、彼に自分の顔を近づける。

「渚君って、いま何歳?」

「…22です」

「22!  まさかの年下!  店員さん!」

「ちょっと待って下さい!」

 酒を追加しようとした樹利亜を渚が慌てて引き留める。

「あぁ! 君も飲む?」

「大丈夫です! あぁ! じゃあなくて大丈夫ですか?」 

「えっ?」

 どうして彼が、そんな事を言ってくるのか分からず注文を取りに来た店員も…

「あの? お客様?」

 どうすればいいのか分からず困惑していると、渚がその場に立ち上がり、

「すみませんお水貰っていいですか?」

 渚の注文を聞き店員の女性は、厨房に下がっていった。

「渚君! 私、酔ってなんかないよ?」

「そうですか! だったら…」

 渚がいきなり、樹利亜に顔を近づけてきた。

「ななななぎさくん!?」

 だか、渚の視線は、すぐさま樹利亜がカバンに付けていたバックチャームに移った。

「…樹利亜さん。このバックチャーム可愛いですね? プレゼンですか?」 

 これは…大学時代に堂城君から私が、リナリアの花が好きだと話したら、私の誕生に誕生日プレゼントとしてくれた。本当はネックレスだった。

 けれど、私が嬉し過ぎて毎日のようにつけていたらフックが切れてチャームだけになってしまったのでバックチャームリメイクした。

「友達に貰ったんです。私が、リナリアの花が好きって話したら、友人が誕生日プレゼントにくれたんです」

「そうなんですか? 樹利亜さんは、リナリアの花言葉を知っていますか?」

 リナリアの花言葉、そんなの教えて貰わなくても…

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