17話 S級モンスター2体出現

 ダンジョンを出ると一度帰宅して各自、昼食を食べた。

 その後配信をする為に、またしても別なダンジョンへと足を運んだ。


 あまり同じダンジョンにばかり行っていると、身バレをする可能性が高まるからである。


 初めて入るダンジョンであったが、内部の雰囲気は今まで行ったことのあるダンジョンと同じく、物凄く広い洞窟といった感じなので、そこは助かった。

 光源はなくとも、不思議と明るいのも、今までのダンジョンと同じである。


「じゃあ、配信始めようか。イル、準備OK?」

「いつでも大丈夫だよ!」


 【擬態】スキルで人間の姿になったイルへスマホのカメラを向けると、イルはOKのサインとしてなのか、右手を伸ばしてピースした。


「イルちゃんの戦闘をまた生で見られるとは! ありがたいっす!」


 この前はイルの戦闘シーンを直接見ることのできなかったガオだが、今回はそれを見ることができそうなので、非常に嬉しそうだ。

 もっとも、人間に擬態したままでの戦いになる為、今までの戦闘とは違った形だが。


「じゃあ、行くよ」


 ミナは配信開始のボタンをタップする。

 そういえば、配信の予告をしていなかったので、同接0人にならないか少々不安ではある。


「皆! こんにちは! この前はごめんね! 今日はバッチリ戦闘シーンを見せちゃうよ!」


 イルが元気に叫ぶ。


(チャンネル登録者3000人だし、予告をしていなくても、数人は来るかな?)


 と思っていたが、予想は大きく外れた。

 5分程経過した時のことである。


・配信やってんじゃん!

・見られるとは、運がいいな


 コメント欄にそのような書き込みが、次々と表示された。

 そして、同接数は80人となっていた。


(ええ!? 凄っ! そんなに話題になってたの!?)


「皆! コメントありがとう! 今日は私のアイドルっぷりをしっかりを見せてあげるからね!」


 本来であれば専用のコンタクトを装着するか、画面を直接見なくてはならないが、相変わらず彼女は謎の力でコメントを見たようで、しっかりとコメ返をしている。


・専用コンタクト持ってるとは金持ちだな

・親に買って貰ったんでしょ

・こんなに可愛ければ、勝ってあげたくなるよな


(セーフ!)


 怪しまれていないようだった。


(あまり変な目立ち方をしないようにしないと。あくまでイルが望むように、アイドルっぽく目立とう)


「今からあのゴブリンを倒します! 今日は剣は使いません!」


 イルは右腕と左腕を胸の前で交差させて、バツ印を作った。


・まさか素手!?

・素手は流石にないだろ

・もしかして魔法か!?


「正解! 魔法だよ!」


・っしゃー! 当たった!


(ここは計画通りだ)


 イル自身の模倣能力で得た力は魔法扱いするように、事前に彼女と話を付けておいた。


「炎攻撃!!」


 イルは右腕を伸ばし、その手の平から炎を火炎放射器のように放つ。

 フェニックスの力を模倣しただけあって、相変わらずかなりの高威力だ。

 あっという間にゴブリンは燃えた。


・え?

・何が起こったし

・明らかにS級レベルの魔法だ

・そうか! ヒュドラを倒した時もこれを使ったのか!

・そういうことだったら、もっと早く言ってくれれば良かったのに

・今の内に古参を名乗っておくわ


 コメント欄は大盛り上がりである。


(実際ヒュドラは素手で倒したんだけどね)


 勿論、それは心の中にしまっておく。


「ごめんね、黙ってて! 私アイドルだから、あんまり暴力的なのは良くないかなって思ってね!」


・アイドルなの?

・炎使いのアイドルか

・アイドルだったら推さないと!


(凄くいい感じに配信が進んでいる。まるで有名配信者みたいだ)


 直接ミナが画面に映っている訳ではないのだが、マネージャーとして、誇らしく思った。


(今日は2層にまで行くんだったな)


 2層目に行く為に、3人は階段を降りた。

 そして、モンスターを倒しながら、イルはリスナーと楽しく会話を続けた。


 順調に思えたが、ここでハプニングが発生する。


・は?

・嘘だろ

・なんでS級モンスターが2体もいるんだよ!


 進んだ先にいたのは、2体のS級モンスターである。


 1匹はこの前のドラゴンとは比べ物にならないくらい、威圧感のある漆黒のドラゴン。

 もう1匹は、漆黒の巨大な蛇であった。


「ファフニールと、ヨルムンガンド……!?」


 ガオは震えた声でそうつぶやいた。


・2匹はやばい

・流石に無理だ

・配信切って逃げろ

・全力ダッシュだ

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