6話 自己紹介動画をアップロードする
放課後。
帰宅部であるミナは、すぐに校舎を出た。
『手に入れたスキルを見せたいから、今日もダンジョンに行こうよ!』
『家に帰ってからね』
今日は配信をやらないにしても、身バレをしない格好をしていきたい。
帰り道、顔がかなり隠れるゴツイサングラスを購入した。
家に帰ると、制服から私服に着替える。
これで身バレはしないだろう。
とは言っても配信をする際、ミナはカメラマンを担当するので、映らないのだが。
他の探索者に撮影された場合の保険である。
◇
この前と同じダンジョンへ向かうと、
移動を終えると、寄生していたミナが体外へと放出される。
「で、どんなスキルを手に入れたの?」
「ふふん! 見て驚くといいよ! スキル発動! 【擬態】!」
「ああ、そういう」
ミナはスマホを取り出すと、それについて調べた。
【擬態】。
文字通り、他のモンスターや生物に擬態をするスキルだ。
(転〇ラかな?)
しかし、そこまで便利なスキルではない。
発動者よりも弱い種族にしか擬態できないと、探索者wikiには書かれている。
のだが……
「どう!?」
目の前には、ピンク髪をした、見慣れたイルの姿があった。
「え!?」
「変かな?」
「変じゃないけど……って、そうか」
強さというのは、種族としての強さだと、書かれていた。
例え鍛えたとしても、人間の身ではドラゴンには擬態できないという。
イルは本来であれば地球人を消す為に生まれた存在だ。
人間よりも、格上判定なのだろう。
「どうしたの?」
「なんでもない。服はダンジョンで手に入れた奴?」
「うん! 他の探索者が着ていた服を参考に作った!」
イルが着ているのは、黒にピンク色のラインが入ったセーラー服である。
現実世界では見かけないが、ノベルゲームなどのキャラクターであれば、割と着ている制服かもしれない。
どうやって作ったのかは不明だが、おそらく見かけだけで、性能はただの布だろう。
勿論、この前の戦闘を見てしまったので、防御面の心配もわかないのだが。
「そうだ! ダンジョン配信するんだったら、まずは自己紹介動画で人を集めないと!」
ダンジョン関係専門の動画&配信サイト、【ダンチューブ】。
そのサイトの性質上、いきなり配信をしても、誰も見てくれない危険性がある。
そうなっては、イルが機嫌を損ねる可能性だって十分考えられる。
人間の姿になれるのであれば、自己紹介用の動画を撮影しておこう。
「って、【擬態】って10秒しか持たないじゃん!」
「そうなの?」
とんだハズレスキルである。
「あれ?」
おそらく10秒は経ったハズなのに、イルは人間の姿を保っている。
「どうして!?」
「よく分からないけど、私の擬態時間は、無制限だよ!」
「なぜ!?」
wikiの情報が必ずしも全て正しいとは限らないので、そういうこともあるのかもしれない。
「ダンジョン外でも、変身できればいいんだけどね!」
「本当にね」
ダンジョン外では、あくまで女の子の姿に見えるようにしているだけなので、実際に擬態している訳ではない。
「さてと、自己紹介動画を撮るよ」
「OK! 所で、自己紹介って何を言えばいいの?」
「好きな食べ物とか、どんな配信者になりたいかとか、使う武器とか……そんなことでいいんじゃないのかな? 後は最後に配信に来てくださいって言うといいかも」
本来の姿はともかく、擬態中のイルは非常にかわいいので、言えば来てくれる人も多いだろう。
◇
家に帰ると、編集したイルの自己紹介動画をアップロードした。
最初なので、おそらくあまり再生数は取れないとは思うが、何もしないでいきなり初配信をするよりはマシである。
イルの真の姿を投稿すれば、一気に伸びるのは確実と言っても過言ではないのだが、それはあまりにも危険過ぎる。
彼女を怒らせるような展開へ、持っていってはならないのだ。
「アップロードできた!?」
「うん」
「1万再生くらい行った!?」
「今投稿したばかりだから、まだ0回再生だよ」
「そっか……皆見てくれるといいな!」
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