5話 学校で話題になる

 翌日月曜日、いつも通り中学校へ行く。

 朝のホームルームが始まるまで、自分の席に座り、スマホを触りながら時間を潰す。


「おい、そういえばあれ見たか?」

「あれって?」

「知らないのか? ダンジョン探索者の間で話題の、新種モンスターだよ!」

「俺はダンジョンに興味ないから知らなかったけど、なんでそんなに話題になってるんだ?」

「グロいし、新種だし、滅茶苦茶強いしで、とにかく話題になる要素が満載なんだぜ!」


 クラスメイトの会話が耳に入って来た。


(学校でも話題になってるみたいだ)


 ミナは昨日、ダンジョンの勉強の為にダンジョン探索のまとめサイトを見ていた。

 そこで、誰かが撮ったイルの戦闘シーンが載っていたのだ。


 それを見たネットの人達は大盛り上がり。


(閲覧注意って書かれてるよ)


 動画サイトに転載されたイルの戦闘シーンの動画だが、そのような注意書きがタイトルに書いてあった。

 確かに、かなりグロテスクなので、これはダンジョン探索に慣れた人でもキツイのではないのだろうか?


(そんなことどうでもいいか。そうだ! 今月発売のノベルゲームをチェックしておかないと!)


 ミナはスマホを隠すように机の下に移動させると、それを見下みおろすようにして、画面を見る。


『ねぇねぇ! 女の子の裸が好きなの?』


 脳内に、女の子の声が響き渡る。

 そう、イルの声だ。


『特にそういう趣味はないよ』

『じゃあ、どうしてそういうゲームをチェックしてるの?』

『ストーリーが気になるから』

『なるほどね! また1つ、勉強しちゃったよ!』


 実際の所、あまり表で有名にならないタイプのゲームは、尖ったストーリーのものが多い。

 それが一番の目当てなのだ。

 百合的な趣味はなく、そのようなイラストを見ても、「綺麗なイラストだ」というのが、正直な感想だ。


『それにしても、慣れないな』

『どうして?』

『普段はこんなことしてないからだよ』


 イルは、学校に興味があり、実際に学校生活を見てみたいと言った。

 そのまま連れてくる訳にもいかなかったので、この前のようにミナの体に寄生させているのだ。


 ちなみに寄生したイルと会話する際は、脳内で念じるだけで会話ができる。


『それにしても私、凄い話題になってるね!』

『うん』


 ダンジョンに興味のあるクラスメイトは、皆イルの話題を持ち出している程だ。


『ダンジョン配信者デビューが待ち遠しいよ!』


 ここでミナは、重大なことを忘れていたことに気が付く。


『そういえばさ』

『何?』

『イルの姿だと、配信できないよね』


 ピンク髪の女の子の姿をしているイルだが、それはあくまで幻覚に過ぎない。

 女の子に見えるのはミナだけであり、他の者にはグロテスクに映ってしまう。


 幻覚を見せている間は、戦闘がしにくくなるらしいが、仮に幻覚を見せながら戦闘を行えたとしても、カメラ越しにはイルの本当の姿が映ることだろう。


『私って、そんなにかわいくない?』

『どうだろう』


 そもそも、かわいいかわいくないを議論するラインに達していない。

 勿論、人によって感じ方は違うが、見ただけで気を失う程の衝撃的な見た目なので、それ以前の問題だろう。


 せめて、もふもふ系であれば、かわいい路線で行けたかもしれないが……


『でも、大丈夫! 私はとっておきのスキルを手に入れたからね!』


 そういえば、そんなことを言っていた。


『それがあれば、ダンジョン配信者として、バッチリ活動できるよ!』

『どんなの?』

『えへへ! 内緒だよ!』

『ちなみに、なんでダンジョン配信者になりたいの?』

『言ってなかったっけ?』

『詳しくは聞いてなかった気がする』

『だったら、今言ってもいいかな?』

『どうぞ』


 イルは、なぜダンジョン配信者になりたいのかを話してくれた。


『人間の女の子として、目立ちたいから!』


 確かに今のミナは話題にはなっているが、それはあくまでもグロテスクなモンスターとしてだ。

 そうではなく、人間の女の子として、話題になりたいようだ。


『最終的には、アイドル系ダンジョン配信者になりたいな!』

『え?』

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