第72話
10時半 白藤駅
どれくらい泣いていたのだろう?
さっきまで聞えていた車が通る音、それに小さいけれど聞えていった虫の音すら聞こえなくなってしまった。
本当に一人ぼっちになってしまった。
けど、それならそれでいい。
いまの自、分の顔を誰かに見れられたらきっと心配されてしまう。
そんな人間、自分にはもういないのに
來未は、座っていてベンチから立ち上がる。
そして、腕時計で今の時間を確認する。
時計の針は10時23分を指していた。
「……10時23分。なんて中途半端な時間。まるで……」
いまの私みたい。
來未は、腕時計の時間を見ながら、リュックサックの中からスマホを取り出すと、慣れた手つきでカメラを起動させ、ビデオ撮影モードに切り替えるとで、そのまま自分の方にレンズを向け撮影を始めた。
「……栞、なこ、そして、か……いやぁ、今日まで自分のことを支え愛してくれた全ての皆さん、今日まで本当にありがとうございました。そして、勝手にあの世に行くことをどうか許してください」
そして、録音が終わった同時に、ホールに向かってその身を投げた。
「なな七橋!」
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