エピローグ 3度目の正直婚

第70話

12月12日 午後22時 白藤駅(無人駅)

「4年もここで大学生活送ったのに、ここにくるのがほぼ始めてなんだよなぁ?」

 ビジネスホテルをあとにした來未は、折角なので、思い出の場所を一日掛けて巡り、思い出とも別れを告げた。

 そして、無人駅である白藤駅にやってきた(8時~17時までは1人駅人さんがいる)

 本当は昨日も利用した有人駅である「葵駅」に行こうとも思ったが、昨日の今日なのでやめた。

 それに、誰かが自分のことを覚えているかも知れない。

 なので、学生時代も殆ど利用した事のない白藤駅にやってきた。

 学生時代、來未は学校近くのアパートに部屋を借り、一人暮らしをしていたので殆どこの駅を利用した事がない。

 それなのに、社会人、それも逃避行でこの場所にくるなんてなぁ?

 本当、人生なにがあるか解らないなぁ?

 自動販売機で買ったホットコーヒーを飲みながら、しみじみと今までの思い出について考える來未。

「本当、わたしの人生いったいなんなんだろうなぁ? はぁはぁ」

 好きな人には、2度も婚約直前に振られて。

 まぁ? 2度目は、自分から振ったんだけど。

 それでも、一度はゴミのように捨てれ、存在自体を否定された。

 もう解んない!

「あれ? なんで今更涙が出てくるの?」

 ぽつぽつと流れ出てくる大粒の涙。

 止めようと自分の手で一所懸命涙を拭きとるけど、それを上回るように涙が溢れてくる。

「なんで? 止まらないの! 私は今から……」 

『……まもなく●●最終列車が参ります。ご利用されるお客様は黄色い線の内側ででお待ちください』

 列車の到着を告げる構内アナウンス。

「あぁ! もう、列車がきちゃうじゃあん! なんで止まらないの! 私はこの最終列車に乗らないといけないの! 私は……」

 ここから離れないといけないの!

 それなのに……涙どこか足も動かない。

「●●行き最終列車まもなく発車します。ご乗車されるお客様は、いらっしゃいませんか? 発車します」

 そんな來未を残し、●●最終列車は、白藤駅から出ていってしまった。

 それはつまり、今日の白藤駅の終電がなくなってしまったことになる。

「……」

 來未は、誰もいなくなった駅のホールで一人涙が枯れるまで泣き続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る