第67話

「そうかな? 自分の父親がストーカーみたいなことしてたら、思春期の娘からしたら嫌じゃあないかな?」  

 栞の言葉に須賀谷は、納得できていない。

「嫌じゃあないです! 確かに、わたしも中学生の頃は、父親のことが大嫌いでした。でも……」

「栞ちゃん?」

 突然、泣き出した栞に須賀谷は驚く。

「……須賀谷さん。私の父は、私が二十歳の時、胃がんで亡くなったんです。だから、わたしにはもう父親がいないんです」

「……そうだったんだ」

 申し訳なさそうに、そして、明らかに声が小さくなる須賀谷。

「でも、わたしの父は幸せだったと思います。最後に大好きだった家族に囲まって天国に行けたんですから! なので、須賀谷さんも、こそこそじゃあなくて娘さんに自分のちゃんと伝えた方がいいと思います」

「栞ちゃん!」

「あぁすみません! 生意気なこと言って!」

 自分の言葉詫びる栞に……

「んんん。栞ちゃんの言う通り! 俺、娘に自分の気持ち、ちゃんと伝えるよ! 娘、そして、妻と娘の高校受験を真っ正面から父親から応援するよ!」

「……はい。頑張ってください」

 満面の笑みで返事を返す。

「じゃあ、栞ちゃん! 今度は、3人でご飯食べにくるねぇ?」

「はい! いつでもお待ちしております」

「じゃあ」

 出てきた時とは違う、輝きに満ちた笑顔でroseをあとにする須賀谷を姿が見えなくなるまで見送り続けた。

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