第64話

部屋着から通勤着に着え、洗面所で洗顔と歯磨きを終え、キッチンにやってきたなこは、昨日夜コンビニで買ってきてシラス入りサラダ(ドレッシングつき)に、同じくコンビニで買った野菜ジュースを冷蔵庫から取り出し、テーブルに座る。

「……はぁ」

 なこはため息をつく。

 なこのヘアースタイルは、ブラウンアッシュのロングだった。

 それが洗顔する為に、洗面所に行き、鏡を見たら背中まであった長いうしろ髪がきれいさっぱりなくなり、ベリーショートになっていた。

 それどころか、髪の毛の色もブラウンアッシュから黒になっていた。

 確かに、なこは自分ので髪を染めている。

 そして、その日の気分によって髪の毛の色を変えている。

 なので、家には何種類かのヘヤーカラー剤が常備してある。

 けど、ここ最近は、ブラウンアッシュがお気に入りで当分の間ヘアーカラーを変えるつもりはなかったので、どうして黒に変わってるのか解らない。

 でも……

「はぁ……やっぱり、昨日の失恋が原因だよね? いやぁ? それ以外あり得ない」

 なこは、ベリーショートになってしまった自分の髪を左手で触りながら、昨日の事をゆっくり想い出す。

 昨日、いきなり親友の七橋來未から仕事場に電話が掛かってきた。(編集長と面談中に來未から携帯に電話が掛ってきて自分が出れなかったため)

 そして、半年ぶりに來未とお酒を飲んだ。

 そこで來未から婚約者と別れた告げられ、何故かその腹いせで來未に薪君の勝手に電話をされ、薪君を彼女が働ている(薪君も働いている)職場であるカフェroseのクリスマスイベントに誘う羽目になってしまった。

 まぁ? 結果は誘えず、7年越しの初恋もなぁなぁ感じで終わってしまった。

 電話するんじゃあなかった。

 最初からわたしに入り込む隙間なんかなかった。

 薪君は……來未に恋をしている。

 7年経った今も。

「はぁ……ご飯食べよう」

 朝食のシラスサラダを口に頬ぼる。

「おいしい」 

 もう、やってしまったことはもうしょうがい。

 ヘアースタイルもヘアーカラーももう受け入れるしかない。

 だって……

_ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶう_

 スマホのバイブレーションが鳴る。

「!」

 ☆

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