第51話

來未との話を部署の人に訊かれたくなかったので、休憩に行ってきますと言って、屋上にやってきたなこ。

「なこ! 久し振り! もう用事終わったの?」

 電話の相手は、2コールで電話に出た。

「來未! あんた今どこにいるの!」

「なこの会社の前って言ったらどうする?」

「ふざけないで! そんなウソが私に通じる訳ないでしょ!」

「ごめんごめん。でも、なこの会社の近くにいるのは本当だよ! ほら? 前になこと一緒に映画見に行った大型ショッピングモール。今、あそこで買い物してるの?」

「買い物? なんでいきなり? ってか今日は仕事じゃないの?」

「あぁ今日は休み。だから、久しぶりに、なことご飯食べたいなぁってと思って、なこの携帯に電話したんだけど、何度掛けてもつながらなくて? なこ? スマホの電源切ってた?」

「えっ? 電源切ってないよ?」

 來未に、なんで自分の携帯ではなく、職場の掛けてきたのか、問い詰めようとしていたなこは、彼女からの問いかけに、逆に言葉を失う。 

「そうなの? 私が何度掛けても、只今、電源が切られている為掛かりませんって。メッセージが何度も出て、全く電話が通じなかったんだけど。じゃあ、私のスマホがおかしかったのかな? なんかごめんねぇ? 私のせいでなこに不快な思いさせて」

 來未が申し訳なさそうに謝ってくる來未。

 そんな來未に、なこは……

「……來未ごめん」

「なんでなこが謝るの! なこは何も悪くないじゃあん」

「それはそうなんだけど……」

 私は、一瞬でも來未の事を疑ってしまった。

「……あぁ! そうだ! なこ! 今月発売される雑誌になこの特集ページに載るんだってねぇ? 電話した時、電話に偶然出た出たなこの後輩の女の子がが教えてくれたよ! 凄いじゃあおめでとう!」

「……ありがとう!」 

 來未は自分の事のように喜んでくれた。

「あぁそうだ! 今日、二人でお祝いしない?」

「いいよそんなの! まだ! 発売されてもいないし!」

 なこは、來未の誘いを断ろうとしたが……

「ダメ! 私がなことお酒飲みたいの!」

「……結局、來未が飲みたいだけじゃあん! 解った! 今日は、仕事が早く終わるから。終わったら連絡する!」

「解った! じゃあ、終わったら連絡して!」

 ☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る