第50話

ぽーかん。

 玉木からの攻撃で心ここにあらずの状態で編集部に戻ってきたなこに、後輩の八朔一華が声を掛けてきた。

 八朔一華は、なこの正面の隣のデスクに座っている。

「西野先輩! お疲れ様です!」

「……」

 声を掛けているいるのに、全く会話が一向に成立しないなこに、一華は、なこに何かあったかと思い、諦めずに声を掛け続ける。

「西野先輩! 西野なこ先輩!」

「あぁごめん! 一華ちゃんなに?」

 すると、ようやく、なこが一華の方を振り向く。

「大丈夫ですか? 西野先輩? 玉木編集長になにか言われたんですか?」

 一華は、今日、なこが完成した原稿を編集長に原稿を渡しに行く事を知っている。

 あと、その原稿を完成為、なこがすごく努力していた事も。

 だからこそ、編集長になにか言われたのかと不安になって、思わず「大丈夫?」尋ねてしまった。

「大丈夫。むしろ、もっと欲を持った方がいいって言われちゃった。わたし的には、かなり欲を出したつもりだったんだけど。けど、なんとか提出も終わったよ!」

「お疲れさまです。あぁそう言えば! 先輩! 先輩が出ていてる間! 先輩あてに電話が掛かってきましたよ!」

「誰から?」

「ちょっと待って下さいねぇ? その方の名前、電話番号、そして、先輩へのことづけを預かってますから」

 一華は、なこにそう言うと一枚のメモを彼女に差し出す。

「ありがとう一華ちゃん」

「いえ」

 そう告げると、一華は、再びパソコン作業を再開させた。

「誰からだろう?」

 なこは、一華から貰ったメモを見て、電話の相手が誰なのか確認する。

「!」

※メモの内容

<電話相手:七橋來未さん。携帯番号:090-4XXX-XXXX 用件:久しぶりに、一緒に夕飯どうですか? 可能なら電話ください>

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