第44話

拝啓 遠藤匠様

 匠さんがいま、貴方がこの手紙を読んでいるということは、私はもう二人の前にはいないのですね?

 匠さん。やっぱり怒ってますか? 勝手にいなくなったこと。

 でも、これだけは言わせてください。

 私は、二人のことが嫌いで二人の元から居なくなった訳ではありません。

 それどころか、私が消えたことに栞は一切関係ありません。

 むしろ、二人のことが大好きだから消えたんです。

 だって、私があのまま二人に元にいたら、二人とも私に気を使うし、なにかある度に二人ともわたしに遠慮するでしょ?

 匠さん。私は、それが嫌なんです。

 私は、二人に遠慮して欲しくないし、笑っていて欲しいんです。

 だからこそ、私は、二人から距離を置く事にしたんです。

 それに、匠さん。

 昨日の夜、栞にプロポーズしてましたよね? 

 結婚おめでとうございます。

 匠さん。栞のこと、どうかよろしくお願いします。

 栞は、あぁ見えて本当はかなりの寂しがり屋なんです。

 でも、普段はその姿を絶対見せようとしないです。見せればいいのに。

 だから、これからは匠さんは、そんな栞のことを傍で見守って、護ってあげて下さい。

 匠さん。

 今日まで、本当にありがとうございました。

 そして同時に、突然消える事を許してください。

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